遺言書というと、以前はドラマの中だけで見かけた代物だったかもしれません。
近年では「相続で家族が困らないようにするための準備」として若年層でも用意されることがあり、湘南さむかわ行政書士事務所でも文案作成をご依頼いただく機会があります。本人だけで書こうとすると「何を書けば良いのか」「どんな形式なら有効なのか」「あとで無効にならないか」という点で不安になるとのこと。
遺言書にはいくつか方式がありますが、その中でも自筆証書遺言は、紙とペンがあれば作成できます。一方で、法律で定められた方式を外すと無効となる可能性があります。本記事では、自筆証書遺言の基本について解説いたします。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、遺言者ご本人が、自分の意思を遺言書として残す方式の一つです。特徴は費用を抑えやすく、場所を選ばず作成できる点にあります。
一方で、法律が定める方式(書き方のルール)を満たしているか、内容がはっきりしているか、見落としがないかが重要になります。ここが曖昧だと、相続開始後に手続が止まったり、説明が難しくなったりすることがあります。
自筆証書遺言の「方式」
自筆証書遺言は、民法で方式が定められています。重要なのは、実際の記載が方式に沿っているかどうかです。
全文・日付・氏名は「自書」が原則
基本ルールとして、遺言書の「全文」、作成した「日付」、そして「氏名」は、遺言者(遺言を残す人)が自ら書く必要があります。さらに押印も求められます。
日付については、いつ作成したものか特定できるよう、具体的な年月日を記載するのが安全です。「吉日」など、日付が特定できない表現は避けましょう。
押印は「してあること」がポイント
押印は氏名の後に続けて行う必要があります。実印である必要はありませんが、書類の有効性を巡った争いを避けるためにも実印を用いることが望ましいです。
財産目録はパソコン作成も可能
自筆証書遺言は「全文自書」が原則ですが、近年の見直しにより、遺言書に添付する財産目録は、一定の条件のもとで自書でなくてもよいとされています。
財産目録を自書しない場合の必須ルール
財産目録をパソコンで作成したり、通帳の写し・登記事項証明書の写し等を活用したりする場合、目録の各ページ(両面に記載があるときは両面)に、遺言者が署名し、押印する必要があります。
ここを落とすと、相続開始後の手続で説明が難しくなりやすいため、財産目録を別紙にする場合は、ページ単位の確認を丁寧に行いましょう。
訂正方法(加除変更)
自筆証書遺言は、後から内容を直したくなることもあります。ただし訂正には方式があり、単に二重線を引くだけでは足りません。
訂正時に必要となる要素
一般に、遺言書の中の加除その他の変更は、遺言者が変更箇所を示し、変更した旨を付記し、さらに署名し、変更箇所に押印するといった形で、複雑な方式を満たす必要があります。
「どこを」「どう」変えたのかが第三者にも追える形になっているか、という観点で整えることが必要です。
自宅保管と「法務局の保管制度」
自筆証書遺言は、作成した後の「保管」も重要です。見つからなければ、せっかく作っても実務上困ることがあります。
法務局の「自筆証書遺言書保管制度」とは
自筆証書遺言には、法務局で保管してもらえる制度があります。1件あたり3,900円で、原本は遺言者の死後50年間、画像データは同150年間適正に保管されます。
ただし、法務局の保管制度は、遺言の「内容の良し悪し」や「有効性そのもの」を保証する制度ではありません。これらを確実のものとしたい場合は、公正証書遺言を作成することが望ましいです。
相続開始後の手続(検認)
自筆証書遺言は、相続が始まった後の手続にも注意点があります。
家庭裁判所の「検認」とは
遺言書の保管者や発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を請求する必要があります。 検認は、遺言書の形状や状態を明らかにして偽造・変造を防ぐための手続であり、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
なお、遺言書を発見したらつい開封したくなるかもしれませんが、家庭裁判所の検認を待たずに開封することのないようにしましょう。
検認が不要になる例
公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言については検認が不要です。
「自宅で保管していた遺言書」か「法務局で保管されている遺言書」かで、相続開始後の動きが変わります。作成時点で、保管方法も含めて検討しておきましょう。
自筆証書遺言で書いておきたい内容
方式を満たすことは大前提として、内容も客観的にみて明瞭である必要があります。一般に、次のような要素を意識することが望ましいです。
- 誰に
→ 受け取る人を特定できる書き方 - 何を
→ 財産の特定ができる表現 - どの割合で/どの方法で
→ 分け方を読み取れる - 遺言執行者
→ 定めるか・誰を指定するか(必要性がある場合) - 付言(ふげん)
→ 家族への思いを伝える(法的拘束力とは別に、気持ちの整理として)
特に不動産がある場合は、登記情報との整合は無論、共有の有無なども留意する必要があります。
行政書士の支援
自筆証書遺言は「自分で書ける」反面、すべて自筆するという特性上、やり直しが必要になったときに時間がかかりやすいです。作成をスムーズに行うため、行政書士として以下のような支援が可能です。
- 文案作成・添削
→ 財産や家族関係を整理し、遺言として文章化する - 財産目録
→ 作り方の確認やページ管理 - 資料収集支援
→ 戸籍や登記情報などの収集 - 財産処分
→ 例として空き家化している不動産の処分(提携機関と連携して対応)
相続は、ご家族の状況や財産の内容によって最適解が変わります。
作成に迷った場合は、湘南さむかわ行政書士事務所へご相談ください。目的と状況を伺いながら、方式面・内容面の両方から、整えるお手伝いをいたします。
※ 業務の見積もり・依頼・各種お問い合わせは専用フォームやLINEなどから24時間受け付けておりますので、気軽にご連絡ください。