認知症や脳梗塞などで判断能力が衰えてしまったとき、誰が自分の預貯金を引き出し、介護施設への入所手続をしてくれるのでしょうか?
そんな将来の不安を解消するための制度が「任意後見」です。ご自身が信頼できる家族や専門家に対し、あらかじめ将来の生活支援や財産管理の権限を託しておくことができます。
なぜ「元気なうち」の作成が必要なのか?判断能力という期限
任意後見の契約は、必ずご自身の判断能力が十分にあるうちに行う必要があります。いざ認知症などで意思能力が失われてからでは、法律上この契約を新たに結ぶことができなくなるからです。
任意後見は、ご自身の明確な意思で「誰に」「何を」任せるかを自由に決めることができる制度です。
もし判断能力が低下した後に支援が必要になった場合は、「法定後見制度」を利用するしかありません。しかし法定後見では、家庭裁判所が後見人を選任するため、見ず知らずの専門家が選ばれることが多く、家族が柔軟に財産を管理できなくなるという大きな制約が生じます。
ご自身の望む将来の形を実現するためには、選択肢が狭まる前に早急に手続を進めることが極めて重要です。
法律で義務付けられた「公正証書」による厳格な手続
任意後見契約は、必ず「公正証書」の形式で作成しなければなりません。任意後見契約に関する法律第3条において、公正証書による作成が効力発生の絶対要件として定められているからです。
単なる当事者間の合意書や、自筆のメモ程度では法的な効力は一切認められません。公証人という法律の専門家が関与し、本人の意思確認を厳格に行った上で作成されるため、後になって親族間で「無理やり書かせたのではないか」といったトラブルを防ぐ強力な証拠となります。
作成にあたっては公証役場との専門的なやり取りや文案の調整が発生するため、専門家による確実なサポートが不可欠となります。
契約の締結と「効力発生」のタイミングのズレに注意
任意後見契約は、公正証書を作成した時点ですぐに効力が発生して財産管理が始まるわけではありません。
実際に本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所に申し立てを行い、「任意後見監督人」が選任された時から初めて効力を生じるという厳格なルールがあるからです(任意後見契約に関する法律第4条)。
任意後見監督人とは、任意後見人が財産を不正に使い込んでいないかなどをチェックする役割を担う人のことです。この「契約の締結」と「実際の効力発生」のタイミングが異なる点が、任意後見制度の複雑なところです。
将来、いざという時に手続でご家族が慌てないよう、制度の全体像を正確に理解しておくためにも、作成段階から行政書士へ相談しておくべきです。
司法書士・弁護士・行政書士の違い|相談先の選び方
任意後見の相談先として、行政書士は非常にコストパフォーマンスに優れた選択肢です。弁護士や司法書士に比べて費用を安く抑えつつも、法律に基づいた正確な契約書の作成サポートを受けられるからです。
もちろん、依頼する専門家ごとに大きなメリットがあります。弁護士はすでに親族間で激しい争いが起きている場合の対応に強く、司法書士は将来の不動産登記手続を前提とする場合に適しています。
しかし、「信頼できる家族を任意後見人に指定し、将来に向けた契約を確実に結んでおきたい」という予防法務の段階であれば、書類作成の専門家である行政書士に依頼するのも一つの選択肢です。
| 比較項目 | 行政書士 | 司法書士 | 弁護士 |
|---|---|---|---|
| 依頼費用の目安 | 比較的安価 | やや高額 | 高額になりやすい |
| 強みとなる分野 | 予防法務・書類の作成 | 登記手続 | 親族間の紛争解決・裁判 |
| こんな方におすすめ | 家族を後見人にし、費用を抑えて確実に契約したい方 | 登記手続きが絡む方 | すでに親族間で財産トラブルが起きている方 |
不動産実務に強い湘南さむかわ行政書士事務所の費用
湘南さむかわ行政書士事務所では、任意後見契約の公正証書作成サポートは、基本料金90,000円から承っております。別途、公証役場にて手数料がかかります。
| サポート内容 | 金額の目安(税別) | 備考 |
|---|---|---|
| 任意後見契約の公正証書作成 | 90,000円〜 | 公証役場との打ち合わせを含む |
| 実費 (公証役場への支払い) | 別途手数料 | 公証人手数料や登記嘱託料など (20,000円程度) |
ご相談前にご準備いただきたい必要書類
最後に、当事務所へご相談いただく際、あらかじめ以下の情報をご準備いただくと手続がスムーズに進みます。すべて完璧に揃っていなくても大丈夫です。お手元にある資料の範囲でご相談ください。
| 準備チェックリスト | 概要とポイント |
|---|---|
| 戸籍謄本および住民票 | ご本人と後見人予定者の関係性がわかるもの。 |
| 財産の内容がわかる資料 | 預貯金通帳、不動産の登記事項証明書、 有価証券の書類など。 |
| 将来任せたいことのメモ | 「施設探しを任せたい」「自宅管理を任せたい」 など、希望する支援内容のメモ。 |
ご自身の望む将来の生活を守るためには、判断能力というタイムリミットを迎える前に動き出す必要があります。手遅れになって後悔しないために、まずはお気軽にご相談ください。