市街化調整区域に建つ「農家住宅」を売却したい、あるいは一般の方に貸し出したい。そう考えたとき、大きな障壁となるのが都市計画法の規制です。
農家住宅のままでは売却も賃貸もできない?
農家住宅を農業従事者でない一般の方が住めるようにするには、原則として都市計画法第43条に基づく「用途変更」の許可の取得が必須です。
なぜなら、市街化調整区域はそもそも「市街化を抑制すべき区域」であり、原則として建物の建築や用途の変更が厳しく制限されているエリアだからです。その中で農家住宅は、都市計画法の特例により「農林漁業を営む者が住むこと」を前提として特別に建築が認められた、属人的な建物にあたります。
この特例要件から外れる一般の人がそのまま住むことは、法律上認められていません。仮に無許可で売買や賃貸を行い、第三者が居住してしまうと、都市計画法違反として行政指導の対象となる恐れがあります。
一般住宅へ用途変更するための主な要件
一般住宅への用途変更を実現するためには、自治体の開発審査会が定める基準のクリアが求められます。
特例で建築が認められた建物を安易に一般化させないよう、非常に厳格なルールが敷かれているのをご存知でしょうか。
自治体によって細かな数値要件は異なりますが、主に「建物の居住実績」が厳しく問われるポイントです。例として、神奈川県内における提案基準では以下の要件が挙げられています(一部抜粋)。
- 申請者は当該建築物に現在居住又は利用している者であること。
- 申請者は当該建築物に10年以上の居住又は利用実績があること。
- 申請者が当該住宅等に現在居住していない場合でも、次のいずれかに該当する場合は居住している者とみなす。
- 生計維持者の死亡、破産宣告、負債の返済等経済的理由が明確であること。
- 転勤、離婚等家庭的理由が明確であること。
- 転地療養又は高齢による老人福祉施設等への入所若しくは家族の介護を受けるための転居等、健康的理由が明確であること。
※引用:神奈川県開発審査会提案基準20
上記を含む要件をすべて満たし、それを裏付ける客観的な証拠(疎明資料)を揃えて初めて、用途変更の道が開けると言えます。
【最大の注意点】申請前に転居しないこと
ここで、気をつけるべきポイントがあります。それは、許可が下りる前に転居しないことです。
用途変更を検討される方の多くは、「もう住まないから引っ越して、そのあとでゆっくり売却の手続きを進めよう」と考えるかもしれません。しかし、その行動は致命的な失敗を招く危険性がありあます。
用途変更における「やむを得ない事情」の審査では、現在その家に住んでいる人が、どうしても住み続けることが困難になった、という論理の組み立てが基本です。
すでに別の場所に生活の拠点(新居)を構えて住民票を移してしまっていると、「新しい家に住めているなら、今の家を用途変更する必要性がない」と行政側から判断されるリスクが高まります。現在の家に住みながら申請の準備を進めることが鉄則と言えるでしょう。
複雑な手続きは専門家である行政書士へご相談を
用途変更の申請には、専門的な知見と膨大な労力が求められます。
役所の担当窓口(市町村の都市計画課や土木事務所など)と入念な事前協議を行い、手持ちの証拠をもとに「要件に該当する」ことを論理的に説明し、理解を得なければなりません。
市町村により必要書類が異なりますが、場合によっては戸籍謄本や住民票、登記事項証明書、過去の農地法に基づく転用許可の経緯を示す資料、建築時の土地・建物に関する図面など、多岐にわたる公的資料や証拠を漏れなく収集する手間が掛かります。
もし手続きの途中で要件不備が確定すれば、その不動産は特定の人(例えば農業従事者のみ)にしか売れない・貸せない「負動産」になってしまうかもしれません。確実な手続きを進めるためにも、複雑な実務に精通した行政書士を相談先として選ぶのが賢明な判断です。
相談前に揃えておきたい必要書類のリスト
当事務所(湘南さむかわ行政書士事務所)へご相談いただく際、事前にお手元にご用意いただくとスムーズな資料をご紹介します。すべてが完璧に揃っていなくても問題ありません。現状の確認と、今後の見通しを立てるための大切な手がかりとなります。
| 資料名 | 確認できる内容・目的 |
|---|---|
| 建物の登記事項証明書 | 所有者の名義、建築時期、構造や規模の確認 |
| 土地の登記事項証明書・公図・測量図 | 地目、面積、市街化調整区域内の立地状況の確認 |
| 建築時の検査済証・確認済証 | 適法に建築された建物であることの証明 |
| やむを得ない事情を裏付ける資料 | 医師の診断書、異動の辞令書、施設入所書類など (状況に応じてご案内します) |
市街化調整区域における都市計画法の用途変更は、時間との勝負になるケースも少なくない現状。大切な財産を守るためにも、お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
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