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建設業の経営事項審査(経審)とは?公共事業参入の必須要件と評点アップの法則

2026年10月19日

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建設業の経営事項審査(経審)とは?公共事業参入の必須要件と評点アップの法則

2026年10月19日

民間工事だけでなく、国や自治体が発注する公共事業を元請けとして直接受注したい。

そう考えたとき、すべての建設業者が必ず通過しなければならない関門が「経営事項審査(通称:経審)」です。

建設業許可を取得しているだけでは、市役所や県庁の入札に参加することは許されません。経審とは企業の施工能力や財務状況、社会的貢献度を全国一律の基準で数値化する「通信簿」のような制度と言えるでしょう。

どのような仕組みで点数が算出されるのかという法的な構造から、受審に必要なステップ、ライバル企業に差をつける評点アップの法則までを詳しく解説していきます。

経営事項審査(経審)の基本構造と「総合評定値(P点)」の仕組み

経営事項審査とは、建設業法第27条の23に基づき、公共性のある施設や工作物に関する建設工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない法定審査のこと。

税金を使って行われる公共事業において、工事途中で倒産したり手抜き工事を行ったりする不良業者を排除し、適正な施工能力を持つ業者を客観的に選定する必要があるからです。

対象となるのは、国や地方公共団体などが発注する請負代金額500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事。事業の形態が法人であるか個人(個人事業主)であるかを問わず、元請けとして入札に参加するなら例外なく受審が義務付けられています。

審査の結果は「総合評定値(P点)」という点数で算出され、この点数によって自治体の入札ランク(Aランク・Bランク等の格付け)が決定される仕組みをご存知でしょうか。

5つの評価項目(X1・X2・Y・Z・W)が占めるウェイトと審査基準

総合評定値(P点)は、単に売上が大きければ高得点になるわけではありません。

会社の規模だけでなく、財務の健全性や技術者の質、コンプライアンス体制などを多角的に評価するため、法律上の計算式によって5つの指標がバランスよく組み合わされているためです。

具体的な計算式は「P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W」と規定されており、それぞれの項目に明確なウェイト(比重)が割り振られています。各指標が会社のどの部分を審査しているのか、以下の表で全体像を確認してみましょう。

評価指標
(記号)
審査される項目全体に占める
比重
主な評価基準と審査のポイント
経営規模(X1)許可業種別の完成工事高25%直近2年または3年の平均完成工事高。
実績が多いほど高い評価を獲得可能。
経営規模(X2)自己資本額および平均利益額15%純資産の厚みと、利払前税引前償却前利益(EBITDA)の2年平均値。
経営状況(Y)財務諸表に基づく
8つの経営指標
20%負債回転期間や自己資本比率など、
倒産リスクの低さを専門機関が分析。
技術力(Z)技術職員数および
元請完成工事高
25%保有する国家資格のランク・人数と、
元請けとして施工した工事実績。
社会性等(W)労働福祉・法令遵守
・営業年数など
15%社会保険の加入、建退共、防災協定、
CCUS導入、CPD単位取得等の取組。

経審を受けるために必要な前提条件と申請の4ステップ

いざ経審の申請を行おうとしても、思い立ったその日にすぐ役所へ書類を出せるわけではありません。前提として「受審する業種の建設業許可」を保有していなければならず、毎年の決算確定後に順序を踏んで手続きを進めるルールが敷かれているため。

通常の建設業許可の維持とは比較にならないほどタイトなスケジュール管理が求められるこの手続き。具体的にどのような流れで進行するのか、4つの必須ステップを時系列で紐解いていきます。

税務申告とは異なる「建設業財務諸表」への組み替えと決算変更届

すべてのスタートラインとなるのが、事業年度終了後(決算日後)4ヶ月以内に県庁等へ提出する「決算変更届(事業年度終了届)」の作成です。経審の審査基準日は「直前の決算日」と定められており、その決算内容を反映した公式な財務データを行政へ登録しておく必要があります。

ここで最大の注意点となるのが、税理士が税務署へ提出した確定申告用の決算書をそのまま使うことはできないという点。建設業法施行規則で定められた独自の会計ルール(完成工事原価報告書の作成や、未成工事支出金・未成工事受入金といった勘定科目の分類)に従い、1円単位で「建設業財務諸表」へ正確に組み替える作業が不可欠となります。

この際、経審を受ける事業者は原則として「税抜処理」で財務諸表を作成しなければならない点も見落とせないルールと言えるでしょう。

登録経営状況分析機関への「経営状況分析(Y点)」申請

建設業財務諸表が完成したら、国土交通大臣の登録を受けた民間の「登録経営状況分析機関」へ経営状況分析の申請を行います。総合評定値のうち20%を占める「Y点(経営状況)」については、都道府県ではなく専門の分析機関が算出する仕組みとなっているため。

分析機関では、提出された3期分の財務諸表をもとに、純支払利息比率や自己資本対固定資産比率など8つの財務指標を厳密にチェックします。不自然な勘定科目の動きや兼業事業売上高の振り分けミスがあれば、分析機関から照会(質問)が入ることになります。

無事に審査を通過すると「経営状況分析結果通知書」が交付され、いよいよ行政庁への本審査へと駒を進めることが可能となります。

神奈川県庁等での「経営規模等評価・総合評定値」の本審査

分析機関からY点の結果通知書を受け取った後、許可行政庁(神奈川県知事許可であれば神奈川県庁)へ「経営規模等評価申請」および「総合評定値請求」を提出する流れへ移ります。残りの指標であるX1・X2・Z・Wの4項目を行政庁が直接審査し、先ほどのY点と合算して最終的なP点を算出してもらう必要があります。

神奈川県での審査においては、申請書に記載した工事実績や技術者の常勤性、社会保険の加入状況に一切の虚偽がないかを裏付けるため、工事請負契約書や入金通帳、年金事務所の領収書といった資料の提示が求められます。

審査官によって数字の整合性が確認され、申請から概ね1ヶ月程度で「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」が手元に届く仕組みです。

有効期間は「決算日から1年7ヶ月」という厳格なタイムリミット

経審の結果通知書を手にした後、最も警戒すべきなのが「有効期間の切れ目(空白期間)」を生じさせないスケジュール管理です。建設業法施行規則第18条の2の規定により、経審の有効期間は「通知書を受け取った日から」ではなく、「審査基準日(直前の決算日)から1年7ヶ月(19ヶ月)」と定められています。

なぜ「1年」ではなく「1年7ヶ月」という中途半端な期間になっているのでしょうか。それは、決算が終わってから税務申告を行い、決算変更届と経営状況分析を経て新しい経審の結果通知書が交付されるまでに、どんなに急いでも数ヶ月(最大7ヶ月程度)のタイムラグが生じるからです。

毎年途切れることなく公共事業の入札参加資格を維持し続けるためには、決算終了から遅くとも「7ヶ月以内」に新しい経審の結果通知書を受け取らなければならないという絶対的な期限が存在する点を忘れないようにしましょう。

経審の評点(P点)を有利に引き上げるための4つの戦略

経審はただ漫然と受けるだけでは、本来の会社の実力よりも低い点数しか出ないケースが多々あります。法律や告示で定められた加点要件を正しく理解し、決算日(審査基準日)を迎える前に計画的な対策を講じることで、合法的に評点を大きく引き上げることが可能な仕組みとなっているからです。

入札のランクが一つ上がれば、受注できる工事の規模が数千万円から数億円単位で変わることも珍しい話ではありません。審査を有利に進めるための具体的な4つのポイントを見ていきましょう。

技術職員(Z点)の資格ランクアップと「6ヶ月超の恒常的雇用」

全体の25%という最大のウェイトを占める技術力(Z点)を伸ばすには、社内の技術職員が保有する国家資格のランクアップと人数の確保が直結します。1級施工管理技士や一級建築士は「5点」(監理技術者講習を受講していれば「6点」)、登録基幹技能者は「3点」、2級施工管理技士は「2点」といった形で、資格の種類ごとに明確な点数配分が決まっているため。

ここで絶対に押さえておくべきルールが、加点対象となる技術職員は「審査基準日(決算日)以前から6ヶ月を超える恒常的な雇用関係があること」という条件。決算の直前に慌てて1級の有資格者を中途採用しても、その期の経審では技術職員として1点もカウントされません。

1人の技術職員につき最大2業種までしか加点対象にできないという制限もあるため、どの資格者をどの許可業種に割り振るかというパズルのような最適配置が評点を左右することになるでしょう。

社会性等(W点)で差がつく加点項目と法令遵守の徹底

近年、国土交通省が累次の制度改正で最も重視しているのが、企業の社会的責任や労働環境を評価する「社会性等(W点)」の項目です。完成工事高(X1)を急激に増やすことは難しくても、社内の制度整備によってW点の加点を積み上げることは中小企業や個人事業主でも十分に可能だからに他なりません。

前提として、健康保険・厚生年金・雇用保険の「社会保険への適正加入」は義務であり、未加入であれば大幅な減点(マイナス評価)を受けるだけでなく、そもそも入札から排除される仕組みです。

その上で有利な加点を得るためには、「建設業退職金共済制度(建退共)への加入」「退職一時金制度や企業年金制度の導入」「法定外労働災害補償制度への加入」「自治体との災害時における防災活動協定の締結」などが極めて有効な手段です。

近年の改正では、建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入や、技術者が継続的に学習するCPD単位の取得、建設機械の保有台数なども重要な加点要素として組み込まれています。

完成工事高の「2年平均・3年平均」の有利選択と元請実績の計上

申請書の作成段階におけるテクニックとして、完成工事高(X1)や元請完成工事高(Z点の一部)を計算する際、「2年平均」と「3年平均」のどちらを選ぶかによって点数が変動します。建設業法の審査基準において、直近の業績変動を緩和するために、申請者が2年平均か3年平均かを任意に選択できるルールが認められているためです。

たとえば3年前の売上が非常に大きく、直近2年間が少し落ち込んでいる場合は「3年平均」を選択した方が評点は高くなります。反対に、ここ2年間で急成長している企業であれば「2年平均」を選んだ方が有利になるのは明らかでしょう。

工事経歴書を作成する際にも、どの工事を元請実績として計上し、どの許可業種に振り分けるかを綿密にシミュレーションすることが、点数を最大化する鍵を握ります。

経営状況(Y点)を悪化させないための決算前の財務対策

全体の20%を占める経営状況(Y点)は、決算書が確定してしまった後では1点たりとも動かすことが不可能な指標です。登録経営状況分析機関による審査は、決算日時点の貸借対照表と損益計算書の数字を機械的に計算式へ当てはめるだけだからです。

一般的な税務対策では「できるだけ利益を圧縮して節税する」ことが良しとされますが、経審において過度な節税はY点およびX2点を暴落させる命取りになりかねません。

代表者への不必要な貸付金(仮払金)を精算しておくこと、不要な固定資産や不良在庫を処分すること、売上債権や借入金のバランスを決算日前に整えておくことが、高評点を維持するための鉄則と言えるでしょう。

当事務所の経営事項審査サポート費用相場

当事務所では、受審する業種数や企業の規模に応じた料金体系を設定しております。前提となる決算変更届の作成から経営状況分析、本審査までを一貫してサポートするため、着手前に必ず総額のお見積りをご提示いたします。

サポート内容当事務所の報酬目安
(税別)
法定費用・分析手数料等の
実費目安
決算変更届の作成・提出
(経審仕様・税抜)
40,000円〜0円
(各種納税証明書等の取得実費のみ)
経営状況分析(Y点)の
申請代行
30,000円〜約13,000円
(登録経営状況分析機関へ支払う実費)
経営規模等評価申請
総合評定値請求(本審査)
100,000円〜11,000円
(1業種の場合。1業種追加ごとに+2,500円)
入札参加資格審査申請
(指名願い・かながわ電子入札等)
40,000円〜0円
(電子証明書ICカード取得費用等は別途)

受審する業種数が複数にわたる場合や、工事経歴書の作成件数が膨大な場合などは別途お見積りとなります

経営事項審査(経審)に関するよくある質問(Q&A)

初めて経審の受審を検討されている建設業者様から頻繁に寄せられる疑問について、法的な事実に基づき回答をまとめました。事前の不安を解消し、スムーズな準備を進めるための手引きとしてご活用ください。

個人事業主でも経営事項審査を受けて公共事業に入札できますか?

個人事業主であっても、建設業許可を取得していれば問題なく経審を受審し、公共事業の入札に参加することが可能です。法律上、法人と個人で受審資格に差はありません。

個人の場合は1月1日から12月31日までが事業年度(決算日は12月31日)と固定されているため、毎年3月の確定申告を終えた後、4月末までに決算変更届を提出し、7月末までに経審の結果通知書を受け取るというスケジュールで動く必要がある点にご留意ください。

赤字決算の年でも経審を受けることは可能でしょうか?

赤字決算であっても経審を受けること自体は完全に可能です。経審は「合格・不合格」を決める試験ではなく、現在の会社の客観的な状態を点数化する制度に過ぎないためです。

赤字になると利益額(X2)や経営状況(Y点)の点数は下がりますが、完成工事高(X1)や技術力(Z点)、社会性(W点)の点数でカバーできれば、一定の総合評定値(P点)を維持して入札に参加し続けることができます。

経審の結果が出るまでにどれくらいの期間がかかりますか?

決算が確定し、税務申告が完了してから経審の結果通知書が手元に届くまでには、全体で「約2~3ヶ月程度」の期間を見込んでおく必要があります。

内訳としては、決算変更届の作成・提出と経営状況分析(Y点)の取得に約2週間〜1ヶ月、その後の県庁等への本審査申請から結果通知書の交付までに約1ヶ月〜1ヶ月半を要するのが一般的です。直前になって慌てないよう、決算を迎えた段階ですぐに行政書士へ相談することをおすすめいたします。

ご相談前に揃える資料のテンプレ(必要書類チェックリスト)

初回の面談時に以下の資料をお手元にご準備いただくと、現在の予想評点(P点)の試算や、次回決算に向けた加点対策を診断できます。すべての書類が揃っていなくても全く問題ないため、まずは現状のデータを専門家と共有し、公共事業参入への道筋を一緒に描いていきましょう。

準備チェックリスト概要と確認のポイント
建設業許可通知書および
過去の申請書控え
現在取得している許可業種と、
登録されている専任技術者(営業所技術者)を確認します。
直近3期分の確定申告書
決算報告書一式
財務状況の推移を把握し、
Y点やX1・X2点のシミュレーションを行うための必須資料。
技術職員の国家資格者証
監理技術者証の写し
Z点の加点対象となる有資格者の人数と、
6ヶ月超の雇用関係を確認します。
社会保険・労働保険
建退共等の加入証明資料
W点(社会性等)の加点・減点要素を
正確に判定するための基礎データとなります。

建設業における経営事項審査(経審)は、単なる役所への事務手続きではなく、会社の売上と信用を大きく飛躍させるための重要な経営戦略そのものです。

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