道路上で工事をしたり、足場や看板が道路にはみ出したり、イベントで車道・歩道を使ったりする場面に取得する許可として、代表的なのが「道路使用許可」と「道路占用許可」です。
名前が非常に似ている両許可ですが、道路使用許可は交通の安全と円滑の観点で警察が判断し、道路占用許可は道路の管理の観点で道路管理者である国・都道府県・市町村などが判断します。必要になる許可は、行為の内容・場所・期間・道路の種類によって変わるため、両者を切り分けて考えましょう。
湘南さむかわ行政書士事務所では、工事・事業の計画段階で「どの許可が必要か」を整理し、申請書類や図面の整合を整える支援につなげる形でご相談を受け付けております。
道路使用許可申請とは
「道路使用許可」は、道路交通法に基づき、一定の行為を道路上で行うときに所轄警察署長の許可を受ける手続です。対象となる行為は大きく4類型に整理され、たとえば「道路で工事・作業をする」「道路に工作物(広告板等)を設ける」「移動しない露店を出す」「祭礼行事やロケ撮影など交通に著しい影響を及ぼす行為」といったものが挙げられます。
道路使用許可の対象になりやすい具体例
- 道路上での工事・作業
→ 管路埋設、マンホール作業、搬出入作業などを含むことがあります - 道路上の工作物の設置
→ 看板、アーチ、横断幕、仮設の舞台・やぐら等 - 露店・屋台等の出店
→ 場所を移動しない形態 - 祭礼行事・集団行進・ロケ撮影等
→ 都道府県の道路交通規則等で具体化される類型
警察庁は、道路使用許可手続を円滑に進めるため、工事やイベント等では交通への影響が様々であることを踏まえ、あらかじめ余裕をもって事前相談することを案内しています。警視庁や各都道府県警のホームページでは、道路使用許可申請書は通常2通作成し、見取図などの添付書類を提出するよう求めています。
「道路上で何かをする」=すべて道路使用許可、ではありません。交通への影響を伴う「行為」かどうかを、まず切り分けることが重要です。
道路占用許可申請とは
道路占用許可は、道路法に基づき、道路の空間を独占的・継続的に使用する(道路の一般使用ではない使い方をする)場合に、あらかじめ道路管理者(国・都道府県・市町村など)の許可を受ける制度です。
国土交通省は、道路の占用を「道路に一定の工作物・物件・施設を設け、道路の空間を独占的・継続的に使用すること」と整理し、電柱・電線、上下水道管・ガス管、アーケード、地下街、露店・材料置場など、法令上想定されている占用物件を例示しています。
つまり、道路の上(または道路の地下・上空を含む道路空間)に置く・通す・設けるような性質が強いものが占用の典型です。
道路占用許可の対象になりやすい具体例
- 道路にはみ出す看板・日よけ(ひさし)など
→ 特定の人が継続して道路空間を使うもの - 足場や仮囲い等で、一定期間、道路空間を占めるもの
→ 道路管理者の基準・協議が必要になることも - 上下水道・ガス・電気・通信などの管路・線路類
→ 工事の有無にかかわらず、設置・存置が占用に該当
なお、申請先は「どの道路か」で変わります。
国が管理する国道、都道府県道、市町村道などで道路管理者が異なるため、まず管理者を確認する必要があります。国が管理する国道の場合、国土交通省は書面申請に加えて「道路占用システム」によるオンライン申請も案内しています。
市町村道等については各自治体の窓口・電子申請の有無・処理期間が異なるため、各団体の案内に従って進める必要があります。
道路使用許可と道路占用許可の違いを整理
| 項目 | 道路使用許可 | 道路占用許可 |
|---|---|---|
| 根拠 | 道路交通法 (一定の道路上行為の許可) | 道路法 (道路の特別使用=占用の許可) |
| 判断の観点 | 交通の安全・円滑 (交通への影響) | 道路管理 (道路空間の独占的・継続的使用の可否) |
| 申請先 | 所轄警察署長 (窓口は警察署) | 道路管理者 (国・都道府県・市町村 等) |
| 典型例 | 道路工事、露店、祭礼行事、ロケ撮影 | 足場、看板のはみ出し、日よけ、管路設置 |
両者は目的が違うため、同じ現場でも「行為」と「物件の設置・存置」が混在すると、場合によっては両方の許可が必要になることがあるので注意が必要です。
両方必要になる代表パターン
「道路占用許可を取ったから道路使用許可はいらない」「道路使用許可だけ取れば足場の占用は大丈夫」といった誤解が起きやすいところです。
例えば、道路に張り出す足場を設置する場合、足場という「物件」が道路空間を一定期間占めるため道路占用の論点が生じやすく、さらに設置・撤去の作業や交通規制が伴う場合は道路使用の論点も生じます。どちらか片方で足りるかは、道路管理者・所轄警察署の判断や現場条件によるため、早い段階で両団体へ相談・確認するのが安全です。
なお、神奈川県警の案内では、道路使用許可と道路占用許可の両方が必要となる場合、手続きによっては一方の窓口に一括して提出できる運用があることが明記されています。
申請前に確認しておくチェックリスト
道路使用許可で確認したいこと
- 行為が許可対象に該当するか
→ 工事・工作物・露店・行事等 - 所轄警察署
→ 場所・区間の管轄、複数管轄にわたる場合の扱い - 実施日時・期間、交通規制の有無、誘導員配置等の計画
- 添付資料
→ 見取図、方法・形態を補足する資料など
道路占用許可で確認したいこと
- 道路管理者は誰か
→ 国管理国道/県道/市町村道など - 占用物件の種類
→ 看板・日よけ・足場・管路等と基準への適合 - 図面・写真
→ 位置図、平面図、断面図等を求められることが多い - 占用料の有無、処理期間
手戻り防止の最大ポイントは、最初に「道路使用/道路占用のどちらか」を決め打ちしないことです。
まとめ
- 道路使用許可
→ 道路交通法に基づく道路上行為の許可で、所轄警察署長が判断する。 - 道路占用許可
→ 道路法に基づく道路空間の独占的・継続的使用(占用)の許可で、道路管理者が判断する。 - 両方必要になりうるケース
→ 足場・看板・工事など
許可の要否や提出先は、道路の管理区分や自治体運用で細部が変わります。現場が決まったら、所轄警察署・道路管理者の案内に沿って、必要な許可を漏れなく整理して進めていきましょう。
ご自身での申請が難しい場合は、湘南さむかわ行政書士事務所まで気軽にお問い合わせください。