トラブルが起きたとき、当事者同士で話し合い、金銭の支払い・謝罪・今後の約束などを決めて解決することがあります。この合意内容を文章にまとめたものが「示談書」です。
口約束でも合意は成立し得ますが、時間が経つほど記憶は薄れ、状況も変わります。示談金の支払日が過ぎた、分割の約束が守られない、「そこまで約束していない」と言われるなどのズレが起きやすいです。合意内容を読み返せる形で残す意味があります。
この記事では、示談書の基本、書くべき項目、公正証書にするメリット、作成時の注意点を解説します。
示談書の位置づけ
示談は、当事者が互いに譲歩して争いを終わらせる合意で、法律上は「和解」に当たると説明されることが一般的です。示談書は、その和解の内容を文書化したもの、と捉えると理解しやすいと思います。
なお、書類の表題は「示談書」でも「合意書」でもかまいません。重要なのは中身が具体的で、合意の範囲が明確なことです。
示談書を作るメリット
「言った・言わない」を減らせる
示談でよくあるのは、「一括払いだと思っていた」「期限は今月末のつもりだった」「その費用は別だと思っていた」といった食い違いです。示談書に金額・期限・方法を明記しておけば、後日起こりうるズレを抑えられます。
支払いの実行性を高める設計ができる
示談金を分割にする場合、支払が遅れたときの取り扱い(遅延損害金など)を示談書に入れておくと、履行のプレッシャーが働きやすくなります。逆に、これらが無いと「待ってほしい」の繰り返しになりやすく、回収の見通しが立ちにくくなります。
示談書に書くべき基本項目
ケースによって必要条項は変わりますが、示談書を「使える書面」にするために、次の項目は優先して検討します。ポイントは、抽象的な表現を避け、数字と日付に落とすことです。
当事者の特定
- 氏名
→ 法人の場合は商号・代表者 - 住所
- 連絡先(任意)
トラブルの概要(対象の特定)
「何についての示談か」が読み取れないと、後述する清算条項の範囲も不明確になります。日時・場所・出来事の要点など、必要最小限で構いませんが、対象を特定できる記載が望まれます。
給付条項(支払い・引渡し・作為不作為など)
- 示談金
→ 損害賠償・解決金等の金額 - 支払方法
→ 振込、手渡しなど - 支払期日
→ 分割なら各回の期日 - 振込先
→ 銀行名・支店名・口座種別・口座番号・名義 - 振込手数料
→ 誰が負担するのか
また、分割払いにする場合は、次のような条項も検討します。
- 遅延損害金
→ 遅れたときに加算される金銭 - 期限の利益喪失
→ 一定の遅延があれば残額を一括請求できる - 担保・保証人
→ 必要があれば定める
謝罪・再発防止・接触に関する条項
金銭以外の合意として、謝罪、接触禁止、SNS投稿の取り扱い、再発防止策などを入れることもあります。
ここは感情面の納得と関係することが多い一方、曖昧にしてしまうと運用が難しくなります。例えば接触禁止なら、対象範囲(直接連絡だけか、第三者経由も含むか)、例外(緊急時、子どもに関する連絡など)をも具体化しておきます。
秘密保持・口外禁止
第三者への口外を制限する条項を入れることがあります。
制限対象として、示談の内容、当事者の情報、トラブルの経緯等と、その例外として、弁護士・税理士等の専門家や、行政機関への説明を行う場合などを整理し盛り込んでおくと、後から争点になりにくくなります。
清算条項(免責条項)
示談書の中でも特に重要なのが清算条項です。たとえば「本件に関し、本示談書に定めるほか、当事者間に債権債務が存在しないことを相互に確認する」といった趣旨の条項です。
清算条項を入れておくと、示談書で合意した範囲について追加請求・追加主張がしにくくなります。裏を返せば、清算条項の前に「何を含めて、何を含めないか」を丁寧に詰める必要があります。
たとえば、治療費や修理費、弁護士費用、休業損害など、将来発生し得る費目があるなら、その取り扱いを示談書へしっかりと落とし込むことが大切です。
合意違反時の取り扱い
- 違約金
→ 設定する場合のみ - 損害賠償
→ 違反により生じた損害の賠償 - 通知方法
→ 書面・メール等、記録が残る方法
合意管轄
万一紛争が再燃した場合に備え、裁判になったときの管轄裁判所を合意しておく条項です。必須ではありませんが、当事者の所在地が離れている場合など、想定しておくと安心材料になります。
署名押印・作成通数
最終的には、当事者が署名押印し、各自が原本を保管できるように通数を整えます。後日の証拠として残すため、原本管理はとても重要です。
公正証書にするメリットと注意点
示談金の支払いが分割になる、金額が大きい、相手の支払いに不安があるといった場合は、公証役場で公正証書として作成する選択肢が現実的になります。
強制執行に備える「強制執行認諾」
金銭の支払いを目的とする公正証書に、債務者が支払わないときは直ちに強制執行に服する旨の陳述など、一定の要件が備わると、裁判手続を経ずに強制執行へ進められる仕組みが存在します。
ただし、公正証書にしただけでは当然に強制執行できるわけではなく、必要な文言が整っているか、内容が金銭債務として明確か、といった点が重要になります。公正証書化を検討する場合は、示談内容を「執行できる形」に整えることが重要です。
行政書士に依頼できる範囲
示談書は「権利義務に関する書類」の一種として整理されており、行政書士が合意内容を文章化して整える支援を行うことが可能です。ただし、行政書士は相手方との交渉を代理することはできません。
つまり、当事者間で合意が固まっている、または当事者同士で話し合いを進められる状況で、示談書という文書を「誤解のない形」に落とし込むところが支援の中心になります。
湘南さむかわ行政書士事務所では、合意済み内容を前提に、示談書の文章化や公正証書化に向けたサポートをご相談いただけます。状況により他の専門家と連携すべきケースもありますので、現在の状況を伺いながら適切な進め方を一緒に検討いたします。
※ 業務の見積もり・依頼・各種お問い合わせは専用フォームやLINEなどから24時間受け付けておりますので、気軽にご連絡ください。