令和2年(2020年)にスタートした「自筆証書遺言書保管制度」。ご自身で書いた遺言書を法務局が預かってくれる、比較的新しくて便利な制度です。
この制度を利用すれば、遺言書の紛失や改ざんを防げるだけでなく、相続発生時に家庭裁判所で行う「検認」という手続が不要になります。費用も安く抑えられるため、利用される方が増えています。
一方で、この制度には保管後に生じる可能性がある手続や、内容の有効性に関する落とし穴も存在します。大切なご家族を守るためには、制度の裏側を正しく理解して利用することが重要です。
便利な制度ではあるが「無効」のリスクもある
法務局の保管制度を利用しても、遺言の内容自体が法的に有効であるとは限りません。
法務局の担当官(遺言書保管官)は、日付や署名があるかといった形式的なチェックを行うだけで、法的な内容の妥当性まで審査する権限を持っていないからです。
せっかく法務局に預けたのに、「財産の特定が曖昧である」「表現が複数の解釈を生んでしまう」といった理由で、いざ相続が発生した際に不動産の名義変更や預金解約に使えず、実質的に無効となるケースが存在します。
自己流で書いた遺言を保管しても、その内容が有効なものでなければ、将来ご家族が争う火種を先送りしているに過ぎません。確実な証拠として残すためには、作成の段階から法律の専門家が関与し、内容の正当性を担保することが望ましいです。
住所変更や氏名変更に伴う保管後の手続
この保管制度を利用する上で、見落としがちな最大のデメリットが保管後のメンテナンスです。
遺言書保管法第12条により、遺言者が引っ越しをして住所変更をしたり、氏名変更をしたりした場合は、その都度、法務局へ変更の届出を行わなければならないと厳格に定められているからです。
将来、ご自身が老人ホームや介護施設に入所して住民票を移した場合でも、法務局へ申請する義務が生じます。万が一この届出を怠ると、ご自身が亡くなった際、あらかじめ指定していた家族に対して法務局からの「死亡時の通知」が正しく届かない恐れがあります。
このような場合、遺言者が亡くなったのち、相続人や遺言執行者等が法務局に保管状況を確認することで、遺言書の存在に気付くことができます。
自筆証書遺言書保管制度と公正証書遺言の比較
手軽さの裏に手間やリスクをはらむ自筆証書とその保管制度に比べ、最も安全で将来の負担がない手段が「公正証書遺言」です。
公証人という法律の専門家が作成し、原本が公証役場で厳重に保管されるため、無効になるリスクが極めて低く、住所変更等の細かな届出に悩まされることもないからです。
公正証書遺言であれば、作成後に引っ越しをして住所が変わったとしても、遺言自体の法的な効力には一切影響せず、公証役場への面倒な変更の届出も不要です。それぞれの特徴については以下にまとめました。
| 比較項目 | 自筆証書遺言書保管制度 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 内容の法的な有効性 | 保証されない (無効リスクあり) | 公証人が関与するため確実 (無効リスクは極めて低い) |
| 作成後の住所変更の手間 | 法務局へ変更届の提出が義務 | 公証役場への届出不要 (効力に影響なし) |
| 紛失・改ざんの恐れ | ない (法務局で保管) | ない (公証役場で保管) |
| こんな方におすすめ | 費用を極力抑え、 こまめな手続が苦にならない方 | 将来の手間を省き、 絶対に争いのない証拠を残したい方 |
なぜ元気なうちの早めの依頼が必要なのか?
遺言書の作成を検討し始めたら、少しでも早く専門家へご依頼ください。
遺言の作成には、法律上「遺言能力」が必須であり、認知症などで判断能力が低下してしまうと、いかなる形式であっても有効な遺言を残せなくなるからです。
「まだ元気だから」「もう少し先でいい」と先延ばしにしている間に、急な病気や事故で意思表示ができなくなるリスクは誰にでも、常に存在します。
判断能力が失われてからでは、たとえご家族が望んでも遺言は作れません。ご自身が健康で、意思がはっきりしている今こそが、ご自身の想いを法的拘束力のある証拠として確定させるための唯一の期限なのです。
行政書士による公正証書遺言作成サポートと費用
湘南さむかわ行政書士事務所では、公正証書遺言の作成サポートを90,000円から承っております。
| サポート内容 | 当事務所の報酬目安 (税別) | 備考 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言の作成サポート | 50,000円〜 | 文案作成アドバイス ※保管手続はご自身で行います |
| 公正証書遺言の作成サポート | 90,000円〜 | 公証役場との打ち合わせ 文案調整費用を含みます |
この費用には公証人との打ち合わせや文案調整の費用が含まれております。相続規模に応じた証明書類の取得費用や公証役場に支払う公証人手数料などの費用については、お客様のご状況をお伺いしたうえで別途お見積りいたします。
ご相談前にご準備いただきたい必要書類
最後に、当事務所へご相談いただく際、あらかじめ以下の情報をご準備いただくと、財産の把握や手続が非常にスムーズに進みます。すべて完璧に揃っていなくても大丈夫ですので、お手元にある資料の範囲でご相談ください。
| 準備チェックリスト | 概要とポイント |
|---|---|
| ご自身の身分証明書 | 運転免許証やマイナンバーカードなど。 |
| 財産の内容がわかるもの | 預貯金通帳、固定資産税の納税通知書、 権利証、有価証券の明細など。 |
| ご家族の構成がわかるメモ | 配偶者やお子様など、誰が居て何を残したいのか ご希望をメモなどでおまとめください。 |
最近できた便利な自筆証書遺言書保管制度ですが、一方で、自筆証書遺言の特性から、利用には内容の無効リスクや変更申請の手間といった注意点が存在します。ご家族を争いから守る確実な証拠を残すために、まずは湘南さむかわ行政書士事務所へお気軽にご相談ください。