お住いの土地や、近隣の土地で売買が行われる際などに相談いただくことがあるのが、「ブロック塀が境界線上にあって共有になっている」、または「屋根・雨樋・基礎などが越境している or されている」というケースです。
このような状況に対する理想は、早期に是正(撤去・移設・作り直し)することですが、現実には「解体や外構工事のタイミングまで待ちたい」「売買・相続・建替えの予定が絡む」「すぐ工事できる状況ではない」ということは往々にしてあります。
そこで選択肢となるのが、現況を明確にしたうえで、将来の是正方法・時期・費用負担・承継を取り決める覚書(おぼえがき)です。この記事では、共有ブロック塀・被越境物の「将来是正」について、作成のポイントを整理します。
※ 覚書全般に関する内容は、以下の記事をご参考ください
「共有ブロック塀」「被越境物」について
共有ブロック塀(境界線上の塀)
昭和~平成初期頃までの住宅は、境界線上に共有ブロック塀が設置されているケースが多く見受けられます。
ただし、境界線上に設置されているすべてのブロック塀が共有ブロック塀とは限りません。意図せず境界線上に設置されてしまったケースや、年数経過によって境界線上へ動いてしまったというケースもあります。
いずれの場合も、年数経過や所有者が変わるなどして認識が曖昧になってしまうことから、売買などのタイミングで測量や隣地間の立ち合いを経て、認識を一致させることが一般的です。
なお、共有物とみなされる塀である場合は、単独で処分することができません。民法第251条に基づき、他の共有者の同意を得る必要があります。
被越境物(相手側から自分の土地へ越境)
隣地の建物や工作物の一部が境界を越えて、相手土地側に入り込んでいる状態を越境と呼びます。これに対し、相手側から自分側の土地に越境している状態を「被越境」と呼びます。典型例は次のとおりです。
- 屋根の軒先・雨樋・庇
- ブロック塀の基礎や控壁(ひかえかべ)がこちら側へ張り出している
- 擁壁・土留め・フェンスの基礎
- 配管(上水・下水・雨水)や桝の一部
- 樹木の枝・根
売買・建替え・外構工事を行う側としては、越境が工事計画や将来の紛争リスクに直結します。だからこそ、隣地間との役所は口約束で放置しないことが重要です。
なぜ「将来是正」の覚書が必要になるのか
是正が必要と分かっていても、すぐに工事できないことは珍しくありません。例えば次のような事情です。
- 工事費が大きく、すぐに負担できない
- 建替え・解体の予定があり、二度手間を避けたい
- 隣地側の事情で工事日程が組めない
- 売買の引渡しが迫っており、現況で進めざるを得ない
こうしたとき、覚書で目指すゴールは非常にシンプルです。
「現況を図面・写真・寸法で固定し、将来の是正条件を文章で固定する」
これにより、当事者の記憶違い・担当者交代・相続・売買があっても、話を戻しやすくなります。
最優先でやることは「境界と現況の確定」
境界が曖昧なまま覚書を作成しない
共有ブロック塀も被越境物も、争点は結局「どこが境界か」です。
境界標や確定測量図があるか、境界確認が済んでいるかを確認します。境界標や確定測量図が存在しない場合は、土地家屋調査士へ相談のうえ整理します。
現況の特定は添付資料で固める
将来是正の覚書で最も効くのは、添付資料です。最低限、次の資料を用意すると推奨します。
- 位置図や案内図
→ 対象地はどこか - 現況図
→ 境界線、塀・建物、越境部位、寸法 - 写真
→ 対象物や撮影方向が分かるように
これらは「どの部分の話か分からない」という状態を避けるために用います。
将来是正の覚書に入れるべき条項
当事者・対象不動産の特定
所有者氏名・住所に加え、対象地の地番を明記します。
売買や相続で名義が変わる可能性や、合筆・分筆により地番が変わる可能性もあるため、後から見たときに容易に識別できる表現にします。
共有ブロック塀の取扱い
境界線上で共有と整理する場合は、例として次を記載します。
- 塀の位置
→ 境界線上にあって、誰と誰の共有物であること - 共有物としての管理
→ 修繕の必要性、建替えの有無、将来に渡る管理方法など - 安全上の問題がある場合の緊急対応
→ 連絡先・応急措置
是正を前提とする、被越境物の現況承認
将来是正の覚書では、現況を「容認」する表現が必要になることがあります。ただし、ここは書き方を間違えると危険な箇所です。
重要なポイントは「恒久的に容認する」のではなく、「是正までの暫定措置として容認する」ことを明確にすることです。
- 越境している部位
→ 雨樋や基礎など - 越境範囲
→ 幅や長さ、図面番号 - 暫定容認の趣旨
→ 将来の再建築時まで等
是正のトリガー(いつ直すのか)
「いつか直す」では、ほぼ確実に揉めます。将来是正を実効性ある約束にするには、発動条件(トリガー)を必ず置きます。
- 隣地建物の建替え・解体・修繕のタイミング
- 対象地の売買・相続による名義変更のタイミング
- 共有ブロック塀の更新が必要になったタイミング
実効性を強固な内容とするのであれば、「トリガー発生から何か月以内に実施する」まで書いてしまう方法もありますが、今後の近所付き合いを考慮し、無理難題にしないよう留意しましょう。
是正の方法(何を、どこまで、どう直すのか)
是正の方法は、抽象的な言い回しを避けるのが鉄則です。
- 越境部位は撤去するのか、移設するのか
- 撤去により物理的な影響が及ぶ場合、復旧はどこまで含めるか
- 共有ブロック塀を撤去する場合、代替の境界工作物はどうするか
共有状態の是正が目的となりますので、ブロック塀を作り直す場合、どちらかの土地に再設置することになります。
費用負担(誰がいくら負担するのか)
費用負担は揉めやすい論点です。将来是正の覚書では、次のどれかに落とし込みます。
- 原因者負担
→ 越境している側が、撤去・復旧まで負担する - 共有負担
→ 2分の1ずつ負担する - 見積り基準
→ 複数見積り取得、仕様合意、上限額の設定など
共有負担とする場合、金額を確定できない場合でも、決め方は先に決めておくのがポイントです。
立入り・工事協力(隣地に入らないと直せない問題)
越境の是正や塀の更新は、工事の性質上、隣地への立入りや仮設が必要になることがあります。覚書で定めておく場合は、次を定めます。
- 事前連絡の期限
→ 工事の何日前までに通知など - 立入りの範囲
→ 必要最小限とするなど - 原状回復
→ 養生、清掃、破損時の対応など
承継条項(将来の譲渡・相続に備える)
将来是正の覚書で最も落とし穴になりやすいのが、当事者が変わった瞬間に協議が白紙化することです。
覚書は基本的に当事者間の約束なので、第三者(買主・相続人など)にそのまま当然に及ぶとは限りません。そこで次の整理が必要です。
- 当事者が土地を譲渡する場合、譲受人に本覚書を説明し、同内容を承継させる努力義務を負うこと
- 売買契約の特約や重要事項説明で、越境・共有の事実と覚書の存在を明示すること
署名押印・保管方法(後で「言った言わない」を防ぐ)
覚書の形式は自由ですが、将来是正の覚書は長期にわたり参照されることが多いため、本人性の争いを減らす工夫が重要です。
- 署名(自署)または記名
- 押印(可能なら実印)
- 写しの相互保管(双方が同一内容を持っておく)
覚書のひな形
以下は「隣地のブロック塀が自分の敷地に越境していた場合」の作成例です。
実際に作成する場合は、共有物であった場合や構造物の特定が複雑である場合など、案件により文言調整を行いましょう。

覚書だけでは足りないケース
将来是正の覚書は有効な選択肢ですが、次のケースでは追加の手当が必要になります。
- 当事者間で合意が取れない、すでに紛争化している
- 登記による担保が必要
- 安全上の問題があり、放置すること自体が危険
この場合は、状況に応じて弁護士・司法書士・土地家屋調査士・建築士等と連携して進めることが望ましいです。
湘南さむかわ行政書士事務所でできるサポート
境界まわりの書面は、「現況の特定」と「将来の手順の固定」ができていないと、作っただけで動かない書類になりがちです。湘南さむかわ行政書士事務所では、一例として次の支援を行っています。
- 覚書・合意書・承諾書の作成支援
- 売買・建替等の事情に合わせた条項設計
「このケースは覚書で足りるのか」「売買の特約とどう整合させるか」「将来の承継まで想定したい」など、不明点があれば気軽にお問い合わせください。
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